補選雑感 Part1

(注意: それなりに長くなるので、人物は敬称略で述べることになるがあしからず。)

補選の結果と個人的な感想

補選の結果

 10/22に、国政選挙の補選、徳島・高知合区の参議院選挙と長崎4区の衆議院選挙の補選が行われた。NHKの選挙のページからそれぞれの結果を下に示す。なお、この日には宮城県議選や所沢市長選等が行われた。

参院選 徳島・高知選挙区>

参院補選 徳島高知 | NHK選挙WEB

衆院選 長崎4区>

衆院補選 長崎4区 | NHK選挙WEB

 

 結果として与党から見れば1勝1敗という結果となったわけだが、事前の新聞などの情勢から総合してみると、概ねこの結果になるのは想定は出来ていたのではないだろうか、と私は見ている。ただし、当選に至るまでのプロセスに関して、2点ほど驚いたことがある。1つ目は徳島・高知の参院補選がゼロ打ち*1となったこと、2つ目は長崎4区のほうが私が想定していた以上に差が出た結果となったことだろう。

 

参議院補選 徳島・高知選挙区

 この補選は、前職の高野光二郎(自民)が、居酒屋にて秘書を殴打し、出血させた責で辞職したことに伴い、実施されたものである*2

秘書殴った自民の高野光二郎・参院議員、地元高知で辞職表明「取り返しのつかないことをした」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 補選では、自民党からは高知県議会議員だった西内健*3が、野党系からは広田一*4が無所属として出馬し、一騎打ちとなった。連立与党の公明は西内を推薦した一方、広田は連日野党系の議員が演説に詰めかけ、また、共産は支援という形で関わり、「共闘」が成立した構図となった。前職の高野は高知にルーツのある議員だったが、この補選で立候補した2人とも、高知県にルーツのある候補であった。

 

 1週間前の情勢では、概ね広田が先行する形となった*5。この段階からは、少なくとも、広田が先行する形で接戦が繰り広げられているものと想定した。基本的には、与党は組織票をまとめ、多少の差がついていても最終的には挽回できるものと私は想定していて選挙の様子を眺めている。

 ところが、蓋を開ければ、広田一にゼロ打ちで当確が打たれ、得票でも大差がついて当選した。西内の惜敗率は60%少しとかなり酷い。事実NHKのサイトで各自治体の結果を見ると、広田は中心都市を筆頭に殆どの自治体で西内を上回った*6投票率は30%全体で、とくに徳島県側で20%台という値が続出し、寂しい結果となっている。

Xユーザーの三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部さん: 「10月22日に投開票が行われる参院徳島・高知県選挙区補欠選挙の情勢報道です。情報を更新しました。 https://t.co/TFfzL01cZN」 / X (twitter.com)

 

 前職の辞職理由が秘書に対する暴力であり、パワハラの極致でもあった。加えて岸田政権の支持が低下している中で、自民党に逆風が吹いていたことは想像に難くない。また、広田一は、21年こそ大敗したものの、17年の衆院選では大臣経験者だった山本有二*7小選挙区敗北に追いやるほどの実力者ではあった。そのため、その点で言えば、候補者の強さも影響したのではないかと見ている。

 

 新聞等の論調では、広田が「県民党」として政党色を薄めた展開を行ったことを分析しており、政党色が無かったことに対する野党の「煮え切らなさ」を指摘しているものが目立った。朝日新聞の有料記事は、後半にこの点に注目している。確かに広田は17年衆院選では無所属*8で、21年では立憲で立候補したため、そういう見方が出てきているのではないだろうか。理解はできるが、Xこと旧Twitterで野党の重鎮議員をウォッチする限りでは、応援に出向いていた様子が見て取れた。加えて先述した通り、共産も「共闘」しているので、野党的なファクタは水面下で働いた点は留意されて良いだろう*9

想定外の苦戦、あぶり出された首相の「弱点」 解散戦略に影響も:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

衆議院補選 長崎4区

 こちらの補選は、21年の衆院選小選挙区当選した、北村誠吾が逝去したことに伴う補選である。自民からは金子容三*10、立憲からは前回の選挙にて高い惜敗率で比例復活した末次精一*11が一度辞職*12し、立候補した。

 

 1週間前の情勢では、両者接戦であり、各紙で金子が先に出るケースと末次が先に出るケースが出るほどに分かれた。接戦ではあったが、この段階では自民がしっかり獲るケースは過去の選挙情勢などを踏まえて考えると多い。そういう意味では、ここは野党系が制する確率は高くはないと判断した*13。結果としては、自民の金子が7,000票ほどの差をつけて選挙戦を制した。もう少し縺れるかと思われた。

Xユーザーの三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部さん: 「10月22日に投開票が行われる衆院長崎4区補欠選挙の情勢報道です。本日の読売新聞、共同通信、長崎新聞を反映しました。各社で名前順が食い違う熾烈な戦いとなっています。 https://t.co/fdN5FEwYWZ」 / X (twitter.com)

 

 差を分けたのは自民が堅実に票をまとめたことと、40%前半という高くない投票率だろう。自治体で見ると、大票田に相当する佐世保市は僅差で末次が制したが、投票率は40%を切った。それ以外の地域では金子を上回った。平戸市では、50%以上の投票率で末次にダブルスコアの差をつけた。このあたりの手堅い戦いぶりは、日経の有料記事や、朝日の有料記事から見て取れる。朝日の記事によれば、父の原二郎が佐世保の知人のもとへ回り、コネクションをフル活用していたようだ*14

「まるで父親参観」そう揶揄された衆院補選 それでも続く世襲の論理 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

自民、地力通りの衆院長崎補選 低投票率でも得票維持 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

だいぶ長くなったので、Part2に移る。次は投票率に注目したい。

*1:投票終了時刻直後(大体は20時ごろ)に、メディアが出口調査の結果から分析して、この候補が当選となるだろう、と報じる現象を指す。

*2:なお、殴打された秘書は辞職しているとのことである。

*3:県連の幹事長経験がある。

*4:参院2期・衆院1期。21年の衆院選では、自民から出馬した元知事の尾崎正直に敗北している。

*5:本来、各種新聞報道を総合するべきではあるが、ここではわかりやすいよう、はる(@miraisyakai)の旧Twitterのアカウントを参照した。衆院長崎4区も同様である。

*6:特に地盤ともいうべき、土佐清水市といった高知西部ではダブルスコア以上の差がついた自治体もあった。

*7:衆院11期。17年は比例復活し、21年は比例単独で再選。俳優の井浦新鈴木一真は義理の息子である。

*8:民進の分裂騒動による影響である。

*9:なお、広田側に寝返った自民の地方議員も居た模様。

参考: 参議院徳島・高知補欠選挙、勝利の広田一氏は戦術使い分け : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

*10:元証券会社勤務、金子原二郎元参議の子。祖父の岩三も国政の政治家だったので、容三は三代目ともいえる。

*11:小沢一郎秘書出身の自由党系の方である。

*12:これに伴い、21年衆院選で沖縄3区で出馬し、落選した屋良朝博が繰り上げ当選した。

*13:20%程度と見ていた。

*14:それにしても朝日の見出しはかなり冷ややかな言いようだ。